ユーザーレビュー
行動する私のために脳が見せてくれる世界 
内容の一部は、前作の「脳の中の幽霊」とダブるけれど、新しい知見も多く、読み応えがある。
著者の言いたいことをまとめると
知覚の最大の目標は、行動する身体のために環境をマップし、行動のモデルを構築することである。
ヒトは自分を中心に、周囲の空間をマッピングする神経細胞群をもつが、直接行動に結びつく、手が届く範囲の空間は、そうでない空間とは区別されて、詳細にマップされている。周囲の空間を地球中心的にマッピングする細胞群(グリッド細胞と場所細胞)も存在し、私たちが今どこにいるのかを教えてくれる。 しかも、これらの神経細胞群は実際に行動することで、改造することができる。一流のスポーツ選手は、生来の優れたマッピング能力にさらに磨きをかけ、まるで背中に目があるように、コートの状態を把握し、ボールを自分の分身であるかのように自在に扱うことができる。 しかし、これらの神経細胞群が傷ついて、マップの連携が崩れると、私たちが当たり前のように思っている世界や自己が揺らいでしまい、目の前の空間の半分しか認識できない、自分の身体を実感できない、自分が身体から抜け出す(体外離脱)、自分に自分がとりついている(ドッペルゲンガー)などの問題が起こってくる。
また、ヒトには内臓感覚の詳細なマップも存在する。ここで意識的な身体感覚と情動感覚がともに発生する。 したがって、内臓知覚が優れた人は情動認知も優れている。このマップは身体の恒常性の維持に関係していて、どうやら心身の痛みは、恒常性のアンバランスを知らせる警報として、ここで発生するらしい。これらの神経細胞群をコントロールすることで、痛みを軽減する可能性も開かれつつある。
この本を読んで、気づいたことをいくつか
1
仕事を始めたばかりのころ、仕事を終えて帰宅途中のJRの階段が、そびえたつ岩山のように見えたのを覚えている。疲れていると同じ丘でも、傾斜が急に見えるのだそうだ。あのころの私は慣れない仕事で、疲労困憊していた。今も同じ仕事をしているけれど疲れない。神経細胞が効率的に働けるようになり、その楽な回路だけ使って仕事をしているからだろう。大人の脳で神経細胞の可塑性が見えにくいのは、大人になってからは、同じようなパターンで行動するからだそうだ。熟練したやり方が楽で、不自由を感じないなら、あえて新しい方法は選ばない。しかし、これではせっかくの神経細胞の可能性を閉じることになるわけか。
2
私は知的障害者の施設で仕事をしたことがあるが、そこには、自分の位置を、まるで上空から眺めているように的確につかめる人々がいた。彼らの場所細胞やグリッド細胞は本当に優秀だったわけで、それらの神経細胞群の連携が乱れれば、自分を上空から眺めているような幻覚が起こっても不思議はないと思う。
3
バドミントンをやっていたころ、一緒にやっている上手な人たちの中に、時々サーブの調子を狂わす人がいて、私はそれを精神的なものだろうと思っていた。あれは、この本の中で説明されているジストニアだった。彼らは神経細胞の限界を超えるほど、練習してしまったわけか。すごい。
変化し続ける脳 
脳と身体そして心がどのように関連しあって
いるのかを興味深いトピックを寄せ集めて紹介
してくれます。(最先端?の研究事例なども
紹介されているために、少し先の未来や社会を
頭の中でイメージしてこれはすごいなと
思わずうなってしまいました。)
脳科学関係の書籍では、科学者/研究者が
自分の世界観だけを紹介しているようなものも
多いかと思いますが、本書はサイエンスライター
によって書かれているために、とてもバランス
良く読者にも読みやすくなっています。
思い込み,イメージトレーニング,リハビリ,
痛み,など日常生活と関連深い項目も盛り込
まれているために読んでいると色々とアイデアが
沸いてくるかと思います。
脳と身体と心の繋がりに興味ある人には、
間違いなくおすすめの1冊です。
それにしても出版社のインターシフト社、
これからますます目が離せません。
最先端の脳神経科学について面白く学べる 
ボディマップ(身体地図)をテーマにして、脳科学の研究成果を紹介している。
車を運転していて障害物の下をくぐる時、無意識に頭をひょいとかがめてしまうが、
これは、車の屋根をまるで自分の頭皮のように脳が認識しているからだ。
脳は、自由にボディマップを拡張し、肉体的限界を超えて物の質感を感じることが
できる。そして、この周囲の世界を感じることができるという能力が、自己認識を持った思考する人
をつくっているのだ。
この本は、ボディマップを通じて、自己認識とは何か(それは錯覚かも知れないが)という
疑問にまつわる様々な研究成果と現時点での回答を示している。
名作脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)や
ベストセラープルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?
にも匹敵するすばらしい脳科学本だと思う。
脳科学、最良の手引き書! 
脳についての書かれている文章にはよく、”可塑性(かそせい)”という言葉が出てきます。
このキーワードを理解しないと脳の本はつまらなくなります。
可塑性とは脳はあたえられたインプットによって変化していき、その変化がしばらくとどまることをいいます。
私は、やわらかい判子をイメージしました。
本書で、5章において、狂った可塑性-スポーツや音楽の達人がうまくいかなくなるわけで、その説明がなされています。
いわゆる、スランプも科学的に説明がきく時代になったのですね。
最新脳科学、最良の手引き書です!
身脳一体 
身体と脳との関係、その一体性について、最新の脳科学・神経科学の知見と、わかりやすい具体例をふんだんに盛り込んで解説しています。
身体と脳との関係については、これまでアントニオ・ダマシオの著作を読んでいましたので、基本的なことについては理解していましたが、本書はそれを凌ぐ内容となっています。
身体を捉える様々な軸であるボディ・マップ、それを構成するボディ・スキーマ(身体の物理的な特性を表わす)とボディ・イメージ(身体についての学習から生じる)が身体と脳との一体性を生み出すと共に、それらの不整合から様々な問題が起きることを示しています。
更に、ボディ・イメージについて、自身の記憶や願望が影響することでボディ・スキーマとの乖離を引き起こすこと、欧米人と日本人とでは、外界の見方が異なる等の知見を踏まえて、身体と脳との関係についての自己認識において文化が影響すること、を指摘しています。
そのうえ、これらの解説を踏まえたうえで、オーラや体外離脱、ドッペルゲンガーの解説といった、これまであまりまともに科学的には説明されてこなかったものについても解説を試みています。
また、身体の重要な部分である内臓と脳との関係の重要性について、アントニオ・ダマシオのソマティック・マーカー仮説(情動は内臓からの情報伝達により生まれる)を踏まえつつ、新たな知見を加えて解説を加えています。
あと、本書においては、身体と脳との関係が崩れた際の処方箋についても幾つか紹介していますが、その中には禅の教えに近いものが結構含まれています。
禅は身体と脳との関係を踏まえたうえで、意識しながら脳と身体をコントロールするものであることから、本書の内容に当然整合するのでしょう。脳を単独で語るのではなく身体との関係を踏まえて明らかにすることで、西洋の科学が東洋の思想と上手く融合するきっかけが生まれています。
ラマチャンドラン、ダマシオ、ガザニガが推奨するだけのことはあります。価値ある本です。
ただ、残念なのは参考文献が一切掲載されていないことです(原著でも)。本書には、様々な新たな知見が紹介されていますので、参考文献が是非ほしかったところです。
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