講談社
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発売日: 1999-02-03 ASIN: 4062639971
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ユーザーレビュー
あれから何が変わったのだろう 
厳密には村上春樹の作品とは言えない。
彼が書いているわけではないから。
しかし、証言した60人近くを、ほとんど村上春樹がインタビューしている。
彼が書くのは、インタビューした方の印象とその背景のみ。
危機的な状況から回復したが、まだうまく話せない方と面会した際の状況(一人)だけを村上春樹が描写している。
そこで、あれだけ生と死を描写してきた村上春樹が、「生きる」ということがどういうことなのかと言う「根源的な命題」に直面した、と書いている。
以前から生と死をテーマに書いてきた作家が、圧倒的な事実を目の前にして「生という根源的な命題」とまでいわざるを得ない状況がそこにあったということだ。
1995年3月20日。
地下鉄サリン事件が起きた日のことは今でもはっきり覚えている。
当時、茅場町の近くにオフィスがあった。
鳴り響くサイレンの音。
当時私も東西線で通勤しており、路線こそ違え、一つ間違うと被害者だったかもしれない。
都内に通勤する方は、そんな方がたくさんいただろう。
たまたまその日が早く出る日だった人、遅く出る日だった人。
運悪く乗り合わせたものの、運良く被害が軽症で済んだ人。
多くの方が命を落とした阪神大震災の2ヶ月後、テロによって12人の方が命を落とし、数えきれない方々がその後の人生を大きく変えることになった。
なんの落ち度もない方々が、訳の分からない連中によって被害に遭い、社会復帰後も後遺症から来る能率の低下等により会社をやめざるを得ないなどの二次被害を受けた。
あの理不尽な事件をどう総括すれば良いのか。
麻原が死刑になったとしても、未だに消すことが出来ない漠然とした不安。
千代田線の駅員だった方の証言が重い。
彼は、「オウムみたいな人間たちが出てこざるを得なかった社会風土というものを私は既に知っていた」と言う。
日々駅で多数の人間に接していると、マイナスの面がよく見えると。
他人の批判はしても自分の責任は果たさない、そんな人間が1995年当時既に増えていたということだ。
あれからもうすぐ15年が経つ。
あのようなものを生み出す社会が変わったと言える自信が私にはない。
恐ろしいです、こんなことが実際起こったと思うと・・・ 
事件の様子が一人一人の証言で生々しく説明してありました。
これが実際に起こったことだと思うと、本当に恐ろしい。
軽率ですが、事件当時、私はまだ中学生。地方に住む私には東京のラッシュアワーの地下鉄がどんなものかもわかっていなかったと思います。
恐ろしい事件だったとは記憶にありますが、ほとんど「ひとごと」だったのかも
しれません。
今回大人になって、東京の通勤ラッシュも経験してみて
あの日に起こったことがどんなに凄まじいことだったのかがわかりました。
時に涙を流しながら読みました。
自インタビュイーの一人ひとりを,個人的に感情的に好きになろうとしている、村上春樹さんが文章から伝わってきました。
彼の作品、彼自身、好き嫌いで片付けてしまえるような作家さんではないと思います。とても尊敬します。
真のサリン事件の記録であり、マスコミが放送しない被害者の方々の真実の物語 
芥川賞作家の辺見庸氏と吉本ばななの父で著名な思想家の吉本隆明氏は地下鉄サリン事件が起こっては小説を書く意味がないと語り、辺見氏はその事件現場に出会ってますが、村上春樹氏をして60数名の被害者とそのご遺族の方々に真摯にインタビューする形でその真実の記録を後世に残させたのが本書です。
本書の内容は以下の村上氏の言葉に凝縮されているとおり、とても深いインタビュー集です。多くの方が本書を読み、オウム事件を他人事とせず、こちら側とあちら側の因果を考えるきっかけにして頂ければと思います。
「私は一人ひとりの人生に、また語られるひとつひとつの話に、あらがいがたく魅了された。人間というものは、人生というものは、じっと目を凝らしてみていくとそれぞれにこれほど奥の深いものなのかと、あらためて関心させられた。その深さに少なからぬ感動さえ覚えた」
そして、「1Q84」で鍵となる手を握ることの深い意味を知悉できます。
「世界の圧倒的暴力」と「作家の倫理」について 
例えば、村上龍のようなタイプの作家ならこうやって取材しまくった後、何か物語を1つ作り上げ、あとがきに分かったようなことをさらっと書いてその話題を消化してしまうだろう。だが、サリンと阪神大震災というポスト・バブルの二大事件に、世界の持つ「圧倒的な暴力」(764p)を感じとった村上春樹は、これだけの圧倒的現実を前に生半可な物語をぶつける程、恥知らずでも迂闊でもなかった。だから、この仕事は出版社を説得してインタビュー集として企画された。(実際のところは、村上龍はサリンにも阪神大震災にも作家として戦いを挑まなかった。単順に書けなかったのだと思う。)
「でも言葉というのは無力なんだなとふとそのときに思った。でも作家である私は、それをたよってなんとか仕事を進めていくしかない。」(708p)
この仕事を通して作者が感じたマスコミへの反感と書く者の倫理、(我々の足元に広がる)世界の圧倒的暴力、(「ねじまき鳥クロニクル」で取材した)ノモンハン事件当時から不変の日本人社会のダメっぷり、等などは最後のあとがきに詳しい。この時代に文学小説に何か少しでも期待するものがある人は必読である。
やたら主人公が泣く村上春樹作品で僕はもらい泣きした記憶が殆ど無いが、このインタビュー集では何箇所か素直に涙が出た。オウム信者と対峙した続編も読んでみたい。
時間は流れるが… 
1Q84を読んで、何故か無性にこの本が読みたくなって読みました。1Q84は私にはちょっとこんぐらかってしまったけど…。
一人ひとり地下鉄サリン事件で被害に遭われた方の証言が、ほぼそのままに載っているのですが、その方たちのそれぞれの体験も怖いし、そこから私が勝手に感じてしまったものも怖かった…。
私も読んでいる途中、なぜか太平洋戦争中の日本軍を連想してしまったし、また昨今おこっている無差別殺人事件を連想してしまった…。今まで全然違うものだって思っていたのに…。
いろいろと細々と思うところはあるんですが、地下鉄で被害あった人たちがいる場所の向こう側は普通どおり動いていた世界があるっていう絵が、頭の中に染みついて離れません…。
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